入浴と睡眠って本当に大切だと思っていて、“人間力や民度” にもつながってくると確信しているくらいなんです。
古代ローマでは、政治家たちによる議会を浴場で行ったりもしていたようです。まずはお風呂に入って、体中に蓄積している老廃物をしっかり外に排出し、リラックスさせた状態で話し合いをしたほうが、良い効果を得られるのでしょう。
それまでは狭窄的な視野で「絶対ありえない」と決めつけていたことも、相手の異論に対しても、実はそちらにも理がありそうだ、というようにフレキシブルに受け入れられるようになるのかもしれません。
単純ですけど、良い入浴と睡眠は、良い社会を作る上で大事なことだと思います。
それくらい入浴と睡眠は大切ですし、お風呂と睡眠は私にとっても疲れを癒し活力につながる神聖なもの。お風呂場と寝室は、まさに私にとってのサンクチュアリ(聖域)なんです!(笑)
お風呂は子供の時から大好きでした。おじいさんおばあさんと一緒にいた頃は、よく銭湯に行っていました。家にもお風呂はあったのですが、おともだちに会える銭湯のほうが良かったみたいですね。そこは古代ローマも同じ。日本も古代ローマも浴場は、コミュニケーションを取る場所なんです。母と暮らした北海道でも近所に銭湯があったので、毎日のように通っていました。
ところが、その後生活したイタリアもポルトガルも浴槽のない家ばかりで “お風呂に入りたい、お湯に全身包まれたい!”という渇望が、日々増長していきました。
そんな想いから生まれた作品が『テルマエ・ロマエ』なんです(笑)
現在執筆中の『続・テルマエ・ロマエ』では、主人公ルシウスは還暦間近のベテラン技師として登場します。偏屈さも増しましたが年齢も近いので描きやすくなりました(笑)
『テルマエ・ロマエ』が刊行されたときは、友人から”この人マリじゃん、このおじさん完全にマリ!と言われましたが、どうやら無自覚のうちに自分の人格が投影されているようです(笑)
人間というのは、ごはんが食べられればそれでいいというだけの生態ではありません。“精神”という他の動物には無い機能にも栄養を補給しなければなりません。あらゆる感情と向き合いながら日々頑張って生きていく、そんな自分たちを癒してくれるのが浴場です。お湯は誰でも見境なく、「おつかれさん、大変だったねえ」と命を励ましてくれます。古代ローマ人も健全な明日を司る社会のために、お湯に癒やされる場は必須だと考えていたはずです。
例えば古代ローマのカラカラ浴場。テルマエの時代のもっと後に建造されたものですが、要は、日本のスパリゾートみたいなもので、お風呂だけではなく、運動もできれば、観劇もできるし、図書館もあり、食堂もある。心身全てをさまざまな栄養素で満たすことのできる総合施設です。人間に生まれて良かった感に満ち溢れた大浴場ですよ。何より、そういうものを建造して民衆から人気を得ることで、皇帝カラカラの人気もアップしますからね。
古代浴場には運動場も併設されているのが常ですが、古代ギリシャ時代にはそうしたトレーニング施設に哲学者も集まって、アスリートの側でさまざまな論議を交わしていました。要するに、肉体のトレーニングと、頭のトレーニングを行う場所だった。
そうすることによって、人としての授かった能力のバランスを整えられたのかなと思います。そして、シメにお風呂に入って、トータルバランスの整った自分が出来上がる、ということです。
私は子供の頃から昆虫が大好きで、今も家にはオオクワガタとカブトムシの幼虫がいます。数年前に50個ほどの卵が全て五体満足のカブトムシとなって羽化したのはいいものの、土から出てくるなり皆で大騒ぎ。性格が荒々しいもの、どん欲なもの、喧嘩っ早いもの、おっとり系、穏やか系と、カブトムシの世界も人間と同じなんだなと感慨深くなりました。昆虫を飼育していると、社会での出来事に対しても常に距離を置いて俯瞰で分析できるようになりますね。
ビデオを撮影したので今一度みてみると、例えば一匹のカブトムシが静かに樹液ゼリーを吸っていると、気性の荒々しい喧嘩好きのカブトムシがやってきて、その平和なカブトムシを吹っ飛ばし、他のカブトムシと取っ組み合いを続ける。するとそこに仲裁に入るカブトムシが現れて、いったん引き下がっても、短気さを抑制できないのか、すぐにまた喧嘩が再開される。吹っ飛ばされた穏やかなカブトムシは体制を整え直し、また静かに樹液ゼリーを一人でいただいている。昆虫に個性なんてない、と思っていると大間違いです。
こうしたカブトムシの生き様を観察していると、自分は人間だから優れている、地球上で選ばれし生態、などと奢ったことはとても思えなくなります。だから人間は太古の昔から、群れ社会を持続させるにはどうしたらいいのかという試行錯誤を繰り返してきたわけです。神と信仰、法律、倫理、哲学。こうしたものでメンタルを日々整えていかないと、人間は凶暴なので、放っておくととんでもないことになる。カブトムシの茶番劇レベルでは済まなくなってしまうでしょう。人間という自分たちの存在を客観的に分析するのに、だからこうした昆虫の飼育はなかなか意味があるなと思います。
マニフレックスはイタリアでの貧乏時代からずっと憧れていたマットレスでした。“いつかはあれで寝たい!”と思っていたわけですが。テルマエがヒットして日本で仕事場を持つことになった時、迷いなく購入しました。
実際に使い始めたときの感覚は忘れられません。自分の人生はなかなか自分の思い通りにいかないことばかりでしたし、旅でも食べ物でも “実際はこんなもんか” と思うことが多い中で、マニフレックスはまるでくす玉が割れるような感動でした。学生時代は貧乏だったけれど、マットレスへの審美眼はあったんだなと(笑)今でもそうですが、実はどんな高級ホテルのベッドに寝ても、できれば自分のベッドで寝たいなあ、と思ってしまいます。マニフレックスの宣伝のために言っているんじゃなくて、ほんとに(笑)だって、マニフレックスを使っているうちの家族や、友人も、皆私と同じく、旅に行くと「早く帰ってうちのベッドで寝たい」って思うって言ってましたよ。すごいですねえ、マニフレックスの人たらし効果(笑)
思い返せば、テルマエ・ロマエがブレイクした後、大使館のイベントで大勢の方とお会いしましたが、そこで山根社長が声をかけてくださって、私は思わず興奮して “マニフレックス大好きです、買ったばかりなんですよ!” と騒いでしまいました。その後も社長とは同じ日にイタリアの星勲章を受章したり、深い縁を感じていて、私にとってはかけがえのない出逢いでしたね。
古代ローマ時代、足りてなかったのは、ずばりマニフレックスですね(笑)。皇帝たちに寝てもらいたかったなあ。人々の意識の高かったルネサンス時代でもいいですね。
お風呂だけではなく“寝る”をテーマにもうひと作品作れそうだな(笑)
マニフレックスの職員がトラックで運んでいたら、急に周りの様子がルネサンス時代になっている。お届け先に行くとメディチの屋敷で、最初は、怪しまれるんだけど、開封してみたらそれは最高の睡眠を誘うマットレスだった。やがてその噂が教皇の耳に入り、近隣諸外国とマットレス外交が始まる…
あっというまにストーリーが出来てしまいました。あとはもう描くだけですね、時間さえあればですけど!(笑)
様々な分野で活躍するエキスパートや著名なゲストを招き、ゲストのライフスタイルや価値観に焦点を当てて日常生活に活かすヒントを提供するマニフレックスの連載企画
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