作家が脳を休める場
USER INTERVIEW / KEIICHIRO HIRANO

「持続可能」かというよりも
「存続可能」かどうか? 心の中で受け止めてみて欲しい 小説家・平野啓一郎

我々は新型コロナウイルスという社会全体で考えていかないといけない大きな問題に直面した訳ですから「これまでとは一緒じゃない」という認識を持つ事が重要だと思います。想い出は想い出として大事ですが世界は変わってきている。しかしそれに適応して生きていく、という事も人間の持つたくましい能力のひとつだと思います。もう人間同士が啀み合っている余裕はない。ひとりひとりがみんな地球規模でどうやって生きていくか?を考え直す大きなきっかけになったと思います――――。


世界中の皆が不安を抱く今、
そこに希望を見出したい思いで、我々は平野啓一郎さんにお話を伺いしました。

我慢を続けるには限界がある、だからアイデアで困難を切り抜けていく。

危機や不便に直面した時こそクリエイティブな能力を発揮すべきではないかと思うんです。そこに関与する事で拓けて来る事がある気がします。辛い事や面倒くさい事を避けるという事で文明は発展してきました。しかし"ガンバレ!"という根性論や、苦しみを我慢し続けるだけでは絶対に続かない。だからこそ新しいアイデアで問題を解決していくべきですし、こんな時だからこそイノベーションにも期待をしたいんです。

例えばダイソンやメルセデスは短期間でこれまでになかったような人工呼吸器を作り上げました。やらない理由、出来ない理由は幾らでもあるでしょうが、解決すべき問題がある以上はやらざるを得ない。

マニフレックスに注目するのも、そのクリエイティヴィティです。当時は寝心地の悪いスプリングのマットレスしか無く、それを当たり前のこととして皆が使っていた中、新しい発想で「高反発のマットレス」を作り出した訳ですから。

寝て起きた時が 一番体調が良くないとおかしいですよね。

自分も随分前までは、スプリングの入ったマットレスで寝ていました。全体がヘタる、というよりも腰の辺りだけがヘタって来るので、しばらく使っていると、凄く腰に負担がかかっていました。せっかく寝たのに起きたら腰が痛いという事がよくあったのですが、マニフレックスに替えてからはそうしたことがなくなりました。寝て起きた時が一番体調が良くないとおかしいですよね。
自分もそのひとりですが、多くの人は「環境問題」に関心を持って、というよりもまずはやはり「寝心地の良さ」でマニフレックスを選んでいるのだと思います。まず「快適である事」。その上でそれが環境にも良いことを兼ねている、というのが理想的なんじゃないでしょうか。この両立を皆、目指すべきだと思います。

何かを決断をしたのは、
「危機感」を感じた時でした。

悲観的かもしれませんが「危機感」を持つ事も必要だと考えています。人間が本当に自分の生活態度を変えたいと思う時に、ポジティブな夢を描いて進んでいける人って少ないと思うんです。尻に火がついて、このままではいけない、となって初めて、転職をしたり、住む場所を変えたり、といった大きな決断が出来るんだと思うんです。僕のこれまでの人生でも何かを大きく変えた時は、現状のままだとダメだ!という「危機感」を持った時でした。

世界を変えるための17の目標

今、世界中の多くの人が注目しているSDGsとは「持続可能な開発目標」の略語ですが、「持続可能」とポジティブなイメージの中で美しく語っていく事も大事ですが、同時にやはり「このままいったらどうなるのか?」という危機感を持つという事がすごく大事だと思うんです。「持続する事ができるのか?」というよりも「存続する事ができるのか?」と心の中で受け止めた方が実感を伴うのかもしれません。

"正しくない商品"に対して
"やましさ"を感じる位にまで
社会が成熟していくべきだと思う。

「何がカッコいいのか?」という世界的な流れの中で、日本は取るべき消費者の態度が遅れていると感じます。物にポジティブに関わっていくだけではなく"正しくない製品"を使う事に対しての一種の‟疚しさ"を感じるくらいまでに拡がっていかないと、社会的に大きな力にはなっていかない。自分のところだけ良ければいいという企業や、そういう問題に無頓着な企業の商品に関わっていく事に"疚しさ"を感じるという所まで社会が成 熟していくべきだと思います。

不法投棄されたスプリングマットレス

スプリングの入ったベッドは重い上に廃棄をする事が非常に困難。自然環境に対し、いかに異質な素材か?という事がこの写真からもお判りいただけるだろう。

安価な衣料でも、劣悪な労働環境で作られている、ということが報道されれば、気持ちよく着ることは出来ません。プラスチック製品に関してもだんだんそうなっていきつつある。消費者は早めにこういった問題にも関心を持っていた方がこの社会で生きていく上でも良いと思います。企業も、何かのジャンルでリードをしておけば、他社との関係を築いていく上でも利点になります。

大量のプラスチックが使われた製品にご注意

プラスチックは溶解されないため、投棄され、海洋汚染を引き起こす事が世界的な問題となっている。海の生物を危険にさらすばかりか、人体に還元されるなど、危険な物質であるという認識を持つ事が望ましい。作り手はもちろんだが、買う側の人間も気をつけたい。

ひと昔前は環境問題に取り組んでいるというと変な目線を向けられた風潮もありましたが、正しいと思った事に早くから取り組むことは尊敬されるべきことです。イメージの変化にはハリウッドのセレブ達がクールな事として環境問題に取り組んで来た事などもあったと思いますが、結局、地球に住めなくとなると困る訳ですからそれは正しかった訳で、全体として環境に優しいという方向に向かっていかざるを得ないのです。

20年以上前のマニフレックスのパンフレット。当時から環境問題に関し、重要視をしており、人体にももちろん、環境にも優しい製品づくりを行なってきたことが判る。

大きなタイム・スケールを持つ事がとても重要

最近ではストローをプラスチックから紙に置き換えようとしていますけど__、そもそもストローなんて無くてもいいんじゃないか?とも思うんです。そのように考え方を変えていくという事も大事だと思います。地球温暖化やプラスチック問題はすぐに劇的に改善するという状況にはないですが、それでも数十年単位で地道に取り組んでいけば、きっと効果も見えてくると思いますし、そういった取り組みをしている企業を応援する事も大事だと思います。

僕をはじめ妻はもちろん、子供達も皆、家族全員がもう3年以上マニフレックスを使っています。軽いという事も驚いた事のひとつで、輸送の際にも環境負荷が少ないですし素晴らしいと思います。精神的にも体調的にも眠る事が一番ですから、何があっても。だからとてもありがたい事だと思っています。

コンパクトでクリーンな真空ロールアップ製法

30年以上も前に開発をしたマットレスを真空ロール状にする事で1/8の容積となり、輸送の際、燃料を減らせる事にも繋がる。また軽量の為、持ち運びやメンテナンスも容易。

自分には小さい子供がふたりいますが、その子達が大人になった時の事を考えると本当に心配です。グレタさん達が怒るのはもっともだと思いますよ。彼女達が大人になった時に、世界がとても住める状況ではなくなっていたら困る訳ですから。彼女の今から対策を打って欲しい、という主張は、今、新型コロナウイルスで切迫して対策を求めている人達の心境に近いと思うんです。しかしそういった意見になかなか耳を貸さないという側面がある事は、危機的であると皆が自覚するべきだと思います。

環境問題は大きなタイム・スケールじゃないと取り組めないので、自分の寿命や生活の必要性とは違ったレイヤーの中で考えていく事が必要だと考えています。自分の子供や孫の世代が生きていけるような大きなタイム・スケールを持つことが凄く重要になってくるんじゃないでしょうか。立場の弱い人と一緒に生きていていくにはどうしたらいいか?世界的に地球環境について取り組んでいくことや、子供達の世代がこの地球に生き続けていく上で何が必要か?という事をみんなで真剣に考える事が今、凄く求められていると思います。

写真・文/フラグスポート

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